[PR]今日のニュースは
「Infoseek モバイル」




Record #06-1 -- oxford record -- [ PREV ] [ NEXT ]




Record Details


くるり 学(まなぶ)の 牛津録
Record #: 06-1

Title: 「亀と羊と兎とハギス」(一)

Issued on: 2002年3月3日
Last modified: 2002年3月4日

メルマガで発行したモノを、加筆修正して、随時ここにアップしていきます。



your picture here
◎編集後記


 どうも、発行人のくるり学(まなぶ)です。今回の話、いかがだったでしょうか。やっぱりショートショートになりませんでした。下手に調べたり翻訳したりしたのが不味かったかも。全然ディナーの話に届いてないしどうなるんだろうな、この話は。もう自分でも分かりません。自分で自分の首を絞めてます。

○近況

 ついに今タームも、残すところ後一週間となってしまいました。大学院生にはあまり関係ないと書いておきながら、レポートの提出を今ターム末に設定してしまったので、めちゃめちゃ大変です。お陰でメルマガ書いたりするの、週末以外無理になってきました。続きはレポート終わるまでオアズケかも。レポート終わって、更に終了処理もして、つづきを書き始めて、校正して、発行、という手順になるので、次回発行までに一週間以上掛かると思います。悪しからずご了承を。

○アンケート、登録者あれこれ

 今までメルマ!の掲示板を使用していたんですが、15日あたりに新掲示板を導入しました。比較的毎日顔を出して、片言メッセージを残したりしてます。
 簡単な質問や感想、愚痴、コメント等、是非是非お寄せ下さい。

   http://tcup71.tripod.co.jp/7114/kururi_m.html

 更に、次回以降のメルマガに、読者様の意見を反映させようと、アンケートコーナーを用意しました。Pubzineサイトの質問ツールを使用してます。  下記URLをクリックして、画面右下の辺りにある投票ボタンをクリックするだけの簡単な物ですので、よろしくお願いします。

   http://www.pubzine.com/detail.asp?id=16678


 次号は「亀と羊と兎とハギス(二)」 ディナーのお話やっと登場です! 
 来週発行の予定。お楽しみに。

 メールで質問など送って下されば、文章の中でちょこちょこ応えていこうと思ってますので、皆さんどしどしメール下さい。個別に返信できる自信は余りないです(汗)。

by Kururi
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
      !!無断転載厳禁!!     
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
発行者名:くるり 学 (kururi@lycos.co.uk)
マガジン名:英国留学 牛津録
発行周期:ほぼ隔週刊(不定期って申請したのに[泣])
発行人サイト:http://members.tripod.co.uk/kururi/
http://members.tripod.co.jp/kururi_m/
(C)M.Kururi, 2001-2002. All rights reserved.
このメールマガジンは『まぐまぐ』『melma!』『メルマガ天国』『Pubzine』 で発行しています。マガジンIDは以下の通りです。
(まぐまぐ: 80277)(melma!: m00055251)(メル天: 8665)(Pubzine: 16678)





SIDENOTES

 *  掲載されている原文はスコットランドの方言(英語スコットランド方言の中にも更に方言がある)で、上記原文を参照しつつ、訳出された標準英文を日本語訳した。

 *1 スコットランド(蘇格蘭)……第二録で言及したが、連合王国(イギリス)の中の一独立王国。大ブリテン島の北部に位置する。

 *2 1月25日……バーンズ・ナイト。19世紀の国民的詩人バーンズの誕生日を祝う、スコットランドの祝日。バーンズについての詳細は次号参照。

 *3 アイル……EIRE. アイルランドのこと。

 *4 ハイランダー……スコットランドの大部分は、一年中雨量の多い高地であるため、その住民達のことをこう呼ぶ。詳しくは映画「ハイ・ランダー」参照。誤解できること間違いなし。

 *5 スカイ島……Isle of Skye. スコットランド西部に浮かぶ島。またその地域。ゲール語が生きている数少ない地域。

 *6 エリザベス・テーラー……1932年生。芸歴六十数年、ハリウッド往年の大女優。代表作:「ジャイアンツ」「バージニア・ウルフなんかこわくない」「クレオパトラ」等多数。http://www.reelclassics.com/Actresses/Liz_Taylor/liz4.htm

 *7 イングリッシュ English ……ここではイングランド人のこと。

 *8 エジンバラ……スコットランド王国の南東、北海に程近い古の都。この国の首都。

 *9 4インチから4フィート……1インチ≒2.5cm。1フィート=12インチ≒30cm。

 *10 アラパ……ALBA。ゲール語(スコットランド語)でスコットランドの意。

 *11 一パウンド……重さの単位。1ポンド(1Lb)。約450g。

 *12 バグパイプ……スコットランドの民族楽器。次号で更に紹介予定。

 *13 フィスカ……ゲール語で、午後を含めた夕方の意。


  • 登場英単語:
    スコットランド …… Scottland
    ブレイブ・ハート…… Brave Heart
    エリザベス・テーラー…… Elizabeth Taylor
    何だ、初めからこれを見ればよかったじゃないか。 …… Oh, I should've taken this at first.



Body

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■DOMI|MINA■  くるり学 の                ■■■■
■ NVS|TIO ■          牛津録           ■■■■
■ILLV|MEA ■        oxford  record         ■■■■
■ |VVV| ■                第六録の一   ■■■■
■■■■■■■************************■■■■

●第六録「亀と羊と兎とハギス」(一)


        Fair fa' your honest, sonsie face,
        Great chieftain o' the pudding-race!
        Aboon them a' yet tak your place,
        Painch, tripe, or thairm:
        Weel are ye wordy o' a grace
        As lang's my arm.
  
          ようこそ、汝、正直な丸顔よ、
          偉大なるヤワラカ族の族長よ!
          彼ら全ての上に、汝、己が場所を有す。
          牛肉、牛の胃、若しくは子羊肉の上に:
          汝、神の祝福に値するのだ、
          我が腕と共に。
  
     (from "Address To A Haggis" by R.Burns; くるり学訳)(*)


◆ハギス伝説 〜ある英国人記者の記事より抜粋〜 (くるり超訳)
 
  もしあなたがイギリス人なら、ハギスという物を少なくとも一回は聞い
 た事がある筈だ。あの、丸く、ふてぶてしく、黒く、醜い、スコットラン
 ド(*1)の伝統的な料理の一つだ。料理と言うからには食べ物である。味は
 どこか羊肉の感じがするが、個人的には否定しておこう。もしあなたが食
 べてみたいと声に出せるなら、私は迷わずあなたにこう言う。
 
 「おぉ、ブレイブ・ハート」
 
  それでも挫けず、是非とも食べてみたいと言うのなら、何もスコットラ
 ンドくんだりまで出かけることはない。試しにロンドンの風変わりな店に
 1月25日(*2)の晩に飛び込んでみれば良い。スコットランド人の気の良
 さそうなおじさんが、自分のハラワタと同じくらいに濁りきった不恰好な
 料理を出してくれるに違いない。
 
  その際、くれぐれも注意しておきたいのは、決して丸々一つ注文しない
 ことだ。スコットランドですら、異国の人間が注文すると、店中の注目を
 かっさらう事間違いないぐらいの品。その上、一皿平らげるなら、たちま
 ち彼らの一員になれること疑い無しの一品なのだから。
 
  何でそのような料理を、わざわざ彼らは作るのか。これには深い訳があ
 る。
 
  スコットランドはご存知の通り、大ブリテン島の北部に位置する辺境の
 国だ。間違ってもイングランドの一部ではない。立派な独立国なのだ。
  冬は寒く、夏も寒く、夏は雨が降り、冬も雨が降る。一年中闇に閉ざさ
 れた荒くれ者だけの棲める未開の土地である。その辺境の地の、そのまた
 辺境の地に有史以前から棲むと言われる伝説の動物が居る。
 
  ネス湖のネッシーのことではない。「湖のほとりでハイポーズ!」など
 と日本語の看板が掲げられる、商業主義と大ブリテン・カルト主義に汚染
 された架空の生き物とは年季が違うのだ。第一、そんな見るもたやすい場
 所になど居ない。北極海に面した岩場の翳や、アイル(*3)から吹きすさぶ
 岩肌の奥で、ヒッソリと息を潜めほくそえむ希少動物がその地にいるのだ。
 
  あまりにも希少でスコットランド国会でも、保護指定をするかどうか議
 題に掛けられるくらいだから、生粋のハイランダー(*4)ならサッカーなん
 て目もくれないで、一年中そのことばかり考えて過ごす。12月上旬。狩猟
 解禁の日がやってくるのを。
 
  アレについて、あるスコットランド人に尋ねると、次のように語ってく
 れた。
 
 「ええ、そうね。アレを見かけたのは去年の暮れのことだったかしらね。
 私がスカイ島(*5)に行こうとしてた時のことだわ。か細い道で車を運転し
 ていると、突然目の前に飛び込んできてね。若い男が……」それから若い
 男の話が五分ほど続き、ようやく話が戻る。典型的なスコットランドのご
 婦人だ。
 
 「アレは凄かったわ。そうね、一言で言うなら、らぶりー♪」凄いのにラ
 ブリーというのはどう言うことなのか? 私が疑問に思い、問い直すと
 「だって、私、最初、兎でも出てきたのかと思ったのよ。そうしてよく見
 たら×××みたいじゃない。凄いわよねもう×××なのよ」
 
  残念ながら《×××》はスコットランド方言で、筆者には解読不可能だっ
 た。しかし一体どれくらい凄いのだろう。
 「まるで晩年のエリザベス・テーラー(*6)がハイレグ水着でキャットウォ
 ークするようなのよ。凄いわ」それは確かに凄そうだ。
 
  《×××》、卑猥な言葉で無いのは確かなのだが、それ以上問い詰めて
 も若い男の話に戻る一方で、謎は更に深まるばかり。どちらの話も「アレ
 は凄かったわ」の一点張りになり、これ以上有意な回答を得られそうもな
 かった。そこで今度は、もう少し若いスコットランド人青年に尋ねてみる
 ことにする。
 
 「いや〜、あんれはまんず凄かったでな〜。与作の馬鹿さ、あんまりびっ
 くりこいたもんで屁までこいてよ〜」「どんな風に凄かったんでしょうか?」
 「いやそんれがなぁ。オラが畑さ行ってライ麦さ植えてる時のことだぁ。
 真っ暗な空から突然……」で始まるUFOの話は省略。そもそも、ライ麦
 畑でキャッチするのがUFOなんて、紅茶にレモンを入れるようなものだ。
 悪い冗談に違いない。(訳註:イギリスでは通常、紅茶にレモンを入れな
 い。)
 
  暫く未確認な噂話を並べた後、ようやく青年は重い口を開けた。
 「まん丸かったんだな〜」そう青年の話が始まったにも関わらず「ほう、
 兎のようなのに真ん丸い?」と私がそう言った所で、途端に青年の顔はし
 かめっ面になってしまった。理由はなんのことは無い。彼が変な勘ぐりを
 したからだった。
 
 「兎? 誰がほっただ馬鹿な事言っただ。イングリッシュ(*7)の抜け作か?」
 いや、実はすぐそこに座ってるご婦人で。「兎なんてもんじゃねぇだ。敢
 えて言うなら、カメさんだな。」カメさん?「まん丸くて、手足が腹ん中
 に引っ込むような感じだったずら」
  兎のように飛び出てきて、亀のようになり、手足が引っ込んで、食べる
 と羊の肉のよう。話を聞いたところで、益々、謎は深まる一方だった。
 
  そこで私は視点を変え、折角エジンバラ(*8)に来たのだからと、当地エ
 ジンバラ大学の図書館を当たることにした。そして、エジンバラ社会文化
 歴史辞典中に目的の記述と出くわす。
 
  曰く、「ハギス Haggis ―― スコットランド伝統料理、若しくは動物
 固有種。体長4インチから4フィート(*9)。昼は鈍重にしてもっぱら岩陰
 に潜み、夕方の蚊(ミッジ)の活動が始まる頃より夜半に掛けて主に活動
 をする。希少動物ゆえ生態や生存数等の詳細は不明であるが、天敵が居な
 い上に、捕食活動も活発でないため、概して長寿、さらに少産であると考
 えられている。敢えて言うなら、天敵は人間であろう。外見からして哺乳
 類とも推定できるが、鳥類に酷似した嘴(くちばし)を持つ為、詳細は不
 明である。その他、目、科、属、種、何れも不明。」何だこれは? 不明
 だらけじゃないか。
 
  更に、同じ図書館にオックスフォード英英辞典があったので、それを紐
 解いてみる。
  曰く、「ハギスとは、体に良いと言わているソーセージの一種で、マト
 ン(羊肉)とオファル(モツ)を合わせた物である。羊の胃袋に詰められ、
 茹でられてから食卓に出される。」何だこの、やけにあっさりした記述は。
 
  憤りつつ、再び件の歴史辞典に目を移すと、
 「希少な種であるため、料理として使われるのは、専ら羊肉とモツ、もし
 くはオートミールを混ぜて羊の胃袋に入れたソーセージの一種である」
  成る程、オックスフォード英英辞典とは、結局の所イングランド人の書
 物でしかないと納得する。
 
  件の辞典には更に記述が続く。
 「口承文学や歴史に頻出するが、伝説的記述に関しては以下の文献に詳し
 い。
  【以下参考文献】
     “スコットランド民族史” by Sir Warner Scott (1806年)
     “英雄ゴードン伝” by I.Ewen et.al (1819年)
      ……」
  何だ、初めからこれを見ればよかったじゃないか。
 
  さて、こういった参考文献の場合、一番上から当たるのが最も妥当な方
 法である。が、最初の文献は明らかに専門書だ。伯爵様か誰か知らないが、
 そんな奴が書いたものにロクな物はないから早々に諦める。バツ。
 
  次の伝記物。『前書き』を読むと口承文学を基に伝記物に仕上げた物と
 前置きしてある。1819年刊なら古英語を詳解できなくとも、理解すること
 は可能だからこれを当たってみることにしよう。
  そして実際、最終的に私の前に置かれ、疑問を氷解してくれたのもこの
 本だったのだ。
 
 ―――――――――――――――――――――――――――――――――
               (以下、「英雄ゴードン伝」よりの抜粋。)
  
   そうやって命からがら逃げた英雄ゴードンは、エジンバラから北へ
  船で二日、それから徒歩で二日行った所の山の中に隠れることとなっ
  たそうな。
   それから彷徨うこと七日、太陽の出ることただの一度。疲労と飢餓
  が極致に達したある晩、ゴードンは道端で不可思議な生き物に出くわ
  した。
  
  「おお、わがアラパ(*10)の神よ 古の叡智よ 
   弄び 嘲る この鼠にも似た奇怪な生き物を前に
   落ちぶれ 畜生となりて 我が血潮を得よというか
   我が命に更なる苦痛を与えるべく
   生き長らえよと言うのか
   なんという試練を」
  
   手足は四本で口にはクチバシがあり、天使のように飛び上がったと
  思うと、次の瞬間カエルのように着地する。そしてノソノソと這い回
  り始める様は、まるで亀のようだったそうな。よく見ると背中には羽
  根をむしった痕がある。
  
  「それにしても何と言う生き物だ」
  
   全身は黄金色に包まれて、もしかすると聖なる御使いなのか、とも
  思わせたが、邪悪なる生き物であるようにも思えてやはり躊躇せざる
  を得ない。しかし、コレを捕らえて糧としない限り、明日の風さえ感
  じられない。明日の光を二度と見ることはないのだ。英雄は生涯ただ
  一度の逡巡をする。食べるべきか死すべきか。
  
   彼がそこで戸惑っていると、後ろの方より追いついて来た従者の一
  人が、息も絶え絶えに語りかけた。
  「どうか、この黄金色の生き物を捕らえ下さい。これこそは我が村に
  伝わる、黄金色の秘獣に違いありません。一パウンド(*11)食せば、
  十年。二パウンド食せば、二十年、寿命が延びる秘獣とのこと。丸ご
  と一匹その物を食せば、あなたの栄光は永久に語り継がれることとな
  りましょうぞ」
  
   (中略)
  
   マトから前方に向かって6フィート離れた所に二本の棒をつき立て、
  その間に同じ長さのロープを二本張る。そうして、そこからさらに3
  フィートほど離れた所で剣を真直ぐに構えておく。準備ができたら秘
  獣の横で踊りながらバグパイプ(*12)の声を張り上げ、同時に他のも
  のが、秘獣の後方よりヘルメットにて捕らえようとする。
   そう手筈を整えて息をこらし、ゴードンと三人の従者は息を飲んだ。
  
  「本当にこのような方法で捕らえられるものなのか」
  「今はフィスカ(*13)の時を越え、絶好の月夜でございます。これで捕
  らえられないと言うのなら誰ができると言うのでしょう。このような
  夜には月が欠け、獣は光を失い、我らの血肉となるのです。合図は月
  の欠けであります」
  
   果たして、月は欠けた。
  
   ヘルメットの男は渾身の力を込め宙を舞い、秘獣も月の力を導いて
  宙を舞う。
   従者の二人はぐうぐうと不恰好な怒声を上げ、荒くれた馬が“サカっ
  て”カエルのように唸っている様だ。
   これに驚いた秘獣は、突如バランスを崩しロープの片側に足を取ら
  れた。
   しかし獣は、目に見えぬ力でロープをすり抜ける。
   それでもやはりバランスを崩したままなので、すぐに地面に叩きつ
  けられてしまったが、丸い背中が、叩きつけられた地面で弾み、受け
  た反動はそのまま獣を撥ね上げる。
   その先に、月光の反射する勇者の剣が、待ち構えていた。
  
   そして秘獣は、見事串刺しになったそうな。
  
   ヘルメットと共に舞った従者は、その村の出身だったが、最後の力
  で飛びついた為、息絶えたのだった。生まれた村で息絶えることがで
  きたのだから、神の思し召しと言えるのであろう。
  
 ―――――――――――――――――――――――――――――――――
 
  そうやって捕獲された動物が、伝説の動物ハギスなのである。
 
 
 (続く)
 
 
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■




LINKS